考え方
たくさん集めたデータの平均が真の平均の近くに集まり(大数の法則)、その分布が正規分布で近似できる(中心極限定理)ことを理解し、標本平均を標準化して評価できるようになります。抜き取り検査、世論調査、A/B テストの土台です。
- 標本平均 Xˉ
- 無作為に取り出した n 個の値の平均。取り出し方によって変わる確率変数。
- 標準誤差
- 標本平均の標準偏差 nσ。
- 標準化
- (値 − 期待値)÷ 標準偏差 で、平均 0・標準偏差 1 の尺度にそろえること。
コインを 10 回投げると表の割合は 0.3 や 0.7 にもなりますが、1 万回投げればほぼ 0.5 になります。サンプルを増やすほど標本平均が真の平均 μ に近づく、これが大数の法則です。
標本平均 Xˉ の期待値は母平均 μ と同じで、分散は nσ2 です。n 個の平均をとると、ばらつきが互いに打ち消し合い、標準偏差は n 分の1になります(n 分の1ではありません)。
中心極限定理によると、元の分布が正規分布でなくても、n が大きければ Xˉ の分布は正規分布 N(μ,nσ2) で近似できます。だから、どんな分布の平均でも、正規分布の表で確率を見積もれます。
標準化した z=σ/nxˉ−μ は、標本平均のずれが標準誤差の何個分かを表します。∣z∣>1.96 なら、正常でも起こる確率が 5% 未満の大きなずれと判断できます。
1個の値の分布(点線)と、4個の平均 Xˉ の分布(実線)。平均は同じ μ のまま、標準偏差が 4σ=2σ になり、μ のまわりに集まります。ポイント
E[Xˉ]=μ、V[Xˉ]=nσ2、σ(Xˉ)=nσ
中心極限定理: n が大きいとき、Xˉ は近似的に N(μ,nσ2) に従う
標準化: z=σ/nxˉ−μ。P(∣Z∣≤1.96)≈0.95
解き方の手順
- 母平均 μ、母標準偏差 σ、標本の大きさ n、標本平均 xˉ を読み取る。
- 標準誤差 nσ を計算する(n ではなく n で割る)。
- z=σ/nxˉ−μ を計算する(符号はそのまま残す)。
- ∣z∣ が 1.96 を超えるかどうかで、偶然の範囲かどうかを判断する。
例
1袋の重さが平均 500 g・標準偏差 12 g の工程から 36 袋を抜き取ったら、平均は 497 g でした。標本平均を標準化した値 z は?
- 標準誤差: 3612=612=2
- z=2497−500=−1.5
- ∣z∣=1.5≤1.96 なので、このくらいのずれは偶然でも起こりうる範囲です。
工場で詰めるコーヒー豆1袋の重さは、平均 420 g・標準偏差 12 g の分布に従います(正規分布とは限りません)。品質管理のため、16 袋を無作為に抜き取って重さの平均 Xˉ を調べます。中心極限定理により、Xˉ は近似的に正規分布 N(μ,nσ2) に従います。
- 1袋の重さの平均
- 420g
- 1袋の重さの標準偏差
- 12g
- 抜き取る袋の数
- 16袋
- 抜き取った袋の平均
- 427.5g
問い抜き取った 16 袋の平均は 427.5 g でした。この値を標準化した z=σ(Xˉ)xˉ−E[Xˉ] を求めてください。
途中の式
- E[Xˉ]=μ=420(標本平均の期待値は母平均と同じ)
- V[Xˉ]=nσ2=16122=9
- σ(Xˉ)=nσ=412=3
- z=3427.5−420=25
- ∣z∣>1.96 なので、工程が正常でもこれだけずれる確率は 5% 未満です。詰める工程を点検したほうがよさそうです。
答え標準化した値 zは 25
一緒にやる
小さく分けて、一緒に解く
1つずつ答えを確かめながら進みます。間違えても大丈夫です。
工場で詰めるコーヒー豆1袋の重さは、平均 390 g・標準偏差 24 g の分布に従います(正規分布とは限りません)。品質管理のため、64 袋を無作為に抜き取って重さの平均 Xˉ を調べます。中心極限定理により、Xˉ は近似的に正規分布 N(μ,nσ2) に従います。
抜き取った 64 袋の平均は 396 g でした。この値を標準化した z=σ(Xˉ)xˉ−E[Xˉ] を求めてください。
小さな問いに分けて、1つずつ一緒に進めます。
ステップ 1 / 4
標本平均の期待値 E[Xˉ] は?
自分でやる
練習問題
数字は毎回変わります。2〜3問続けて解けたら、次の単元や元のレッスンに進みましょう。