考え方
「限りなく近づく」をあいまいな言葉ではなく、誤差の幅のやりとりとして正確に述べられるようになります。製造の公差(入力の誤差をどこまで抑えれば、出力の誤差が許容範囲に収まるか)と同じ考え方です。
- ε(イプシロン)
- 出力 f(x) の側で許す誤差の幅。先に指定される。
- δ(デルタ)
- 入力 x の側で守る誤差の幅。ε に合わせて、あとから選ぶ。
- 連続
- x→climf(x)=f(c) が成り立つこと。グラフが x=c でつながっている。
高校では「x を c に限りなく近づけると、f(x) は L に限りなく近づく」と習いました。ε-δ 論法は、これを「どんな誤差の注文にも必ず応えられる」という形で言い直したものです。
どんなに小さな誤差の幅 ε>0 を決められても、それに応じて幅 δ>0 をうまく選べば、0<∣x−c∣<δ を満たすすべての x で ∣f(x)−L∣<ε にできる。これが x→climf(x)=L の定義です。ε が先、δ はあとという順番が大切です。
1次関数 f(x)=ax+b なら、L=ac+b として ∣f(x)−L∣=∣a∣∣x−c∣ と書けます。x のずれが δ 未満なら、f(x) のずれは ∣a∣δ 未満です。だから ∣a∣δ≤ε、つまり δ=∣a∣ε と選べば条件を満たします。
傾きが急なほど、入力のずれは出力で大きくなるので、δ は小さくしなければなりません。ε に ∣a∣ を掛けるのではなく、∣a∣ で割る点に注意しましょう。
横の帯が出力の許容範囲 L±ε、縦の点線が入力の範囲 c±δ です。f(x)=2x−1、c=2、ε=1 なら、δ=21 で縦の範囲のグラフがちょうど帯に収まります。ポイント
x→climf(x)=L の定義: どんな ε>0 に対しても、ある δ>0 があって、0<∣x−c∣<δ ならば ∣f(x)−L∣<ε
f(x)=ax+b のとき ∣f(x)−L∣=∣a∣∣x−c∣ なので、δ=∣a∣ε ととれる
連続: x→climf(x)=f(c)
解き方の手順
- L=f(c) を計算し、∣f(x)−L∣ を ∣x−c∣ を使って表す(1次関数なら ∣a∣∣x−c∣)。
- ∣x−c∣<δ のとき、∣f(x)−L∣ がどこまで大きくなるかを δ で書く(∣a∣δ 未満)。
- それが ε 以下になる条件 ∣a∣δ≤ε を解き、最大の δ=∣a∣ε を求める。
- どんな ε でも同じように δ を選べるので、極限が示せたことになる。
例
f(x)=4x+3 について x→2limf(x)=11 を示すとき、ε=0.2 に対して条件を満たす最大の δ を求めてください。
- L=f(2)=4⋅2+3=11
- ∣f(x)−11∣=∣4x−8∣=4∣x−2∣
- ∣x−2∣<δ なら ∣f(x)−11∣<4δ
- 4δ≤0.2 より δ≤0.05。最大の δ は 0.05 です。
よくある間違い
練習問題でこの間違い方をしたときは、その場でお伝えします。
- δ の決め方で倍率を誤る|f(x) − L| = a|x − c| のとき、δ を ε ÷ a ではなく ε × a や ε のままにするなど、傾き(倍率)の扱いを誤る。|x − c| < δ のとき |f(x) − L| がどこまで大きくなるかを δ で表し、それが ε 以下になる条件から δ を決めましょう。
部品の長さ x(mm)から、重さ f(x)=4x+15(g)が決まる工程があります。重さの誤差を ε g 未満に抑えるには、長さの誤差を何 mm 未満にすればよいか――これは ε-δ 論法そのものです。
- ε(重さの誤差の上限)
- 0.05g
問いx→5limf(x)=35 を ε-δ 論法で示します。ε=0.05 に対して「0<∣x−5∣<δ ならば ∣f(x)−35∣<ε」が成り立つような δ のうち、最大のものを求めてください。
途中の式
- ∣f(x)−35∣=∣4x+15−35∣=∣4(x−5)∣=4∣x−5∣
- 0<∣x−5∣<δ のとき、∣f(x)−35∣<4δ です。
- これが ε=0.05 以下になればよいので 4δ≤0.05、つまり δ≤40.05=801=0.0125
- 最大の δ は 801=0.0125 です。どんな ε>0 に対しても δ=4ε ととれるので、x→5limf(x)=35 が示せます。
答えδ の最大値(分数または小数で)は 801
一緒にやる
小さく分けて、一緒に解く
1つずつ答えを確かめながら進みます。間違えても大丈夫です。
部品の長さ x(mm)から、重さ f(x)=6x+18(g)が決まる工程があります。重さの誤差を ε g 未満に抑えるには、長さの誤差を何 mm 未満にすればよいか――これは ε-δ 論法そのものです。
x→4limf(x)=42 を ε-δ 論法で示します。ε=0.1 に対して「0<∣x−4∣<δ ならば ∣f(x)−42∣<ε」が成り立つような δ のうち、最大のものを求めてください。
小さな問いに分けて、1つずつ一緒に進めます。
ステップ 1 / 3
「x→4limf(x)=42」の ε-δ による定義として正しいものはどれですか?
自分でやる
練習問題
数字は毎回変わります。2〜3問続けて解けたら、次の単元や元のレッスンに進みましょう。